1 京町家まちづくり調査の概要



     (1)調査目的
 本調査は,調査範囲内の戦前木造建物と思われるすべての建築物の調査を行い,京町家の外観の実 態把握と保全・再生に対する居住者等の意向を明らかにすることを目的として実施した。






(2)調査範囲
 上京,中京,東山,下京区で,明治後期に市街化していた元学区を調査対象地とした(図1)。図2 は明治後期の市街化の様子を示している。 なお,この調査は,ほぼ同じ内容で先行して行われた市 民調査「木の文化都市:京都の伝統的都市居住の作法と様式に関する研究」(6頁参照)の範囲外の地域 を調査した。


  

図1- 京町家まちづくり調査範囲


   

図2 明治後期の京都市域の市街化状況図 
 
*この地図は,建設省国土地理院の承認を得て,陸地測量部発行の2万分の1地形図を使用したものである。  









(3)調査方法
 約600名の市民ボランティアの方々の 参加と市民活動団体,大学研究室等の協力を得て,財団法人 京都市景観・まちづくりセンターが事務局となり,外観調査,アンケート調査,ヒアリング調査を行った。

ア 外観調査
 目視により,戦前に建てられたと思われるすべての木造建物を対象に類型分けを行ない(図3),写 真撮影を行うと同時に,外観要素の保存状態老朽の度合い等を調査した。

イ アンケート調査
 外観調査を行った全建物にアンケートを配布し,郵送回収を行った。
 アンケート回収率は全体で約16%であった。

ウ ヒアリング調査
 アンケート調査において,訪問調査に応じても良いと回答された居住者等の中から抽出した73件に ついて,ヒアリング調査を行った。



 
図3 外観調査における建物の類型分類         
@総二階  二階の天井高が一階と同程度あり,明治末期から大正時代にかけてこの様式が完成する。
 二階の窓は,木枠ガラス窓が一般的である。
「本二階」ともいう。
D仕舞屋  もともと,専用住宅として建築された,表に店舗を持たない町家である。
 表の窓の開口部(出格子)などが小さいという特徴がある。
A中二階  二階の天井が通常より低く,近世後期に完成し,明治時代の後期まで一般的に建築された町家の様式である。
 二階の窓は虫籠窓が一般的である。
「つし二階」ともいう。
E塀付き  仕舞屋の中でも,特に裕福な商人の専用住宅として建築された。
表に高塀があり,建物が直接道に面していない。
B三階建て  町家の要素を持つ三階建ての建物。 F看板建築  京町家を近代的なビルに見えるように,建物の表を全面的に改修した様式で,特に戦後の高度経済成長期にこうした改修が施された。
 外観は,いわゆる京町家とは大きく異なるが,京町家の外観に戻すことは比較的容易である。
C平屋  町家の要素を持つ平屋建ての建物。 Gその他  以上の@〜Fの類型にあてはまらない建物。










(4)取組経過
 調査に当たっては,財団法人京都市景観・まちづくりセンターを事務局として,市民活動団体,大 学研究室等を中心にチームを編成し,実施した。取組の過程においては,ニュースの発行,各チーム 独自の学習会や交流会などを開催し,調査内容だけでなく京町家そのものの理解に努めた。



ア 調査の実施
 ○調査準備 (平成9年12月〜平成10年3月)
  ・京町家まちづくり調査員募集
  ・調査員研修セミナー
  ・事前調査(調査方法の確認)

 ○第一次京町家まちづくり調査 (平成10年4月〜8月)*一部地域については9月以降も継続
  ・調査件数:16,347件
  ・アンケート回収:2,500件

 ○第二次京町家まちづくり調査 (平成10年10月〜11月)
  ・調査件数:7,540件
  ・アンケート回収:1,165件

 ○ヒアリング調査 (平成11年4月〜10月)
  ・調査件数:73件

イ 関連する取組
  ・合同会議(各チームの情報交流)
  ・意見交流会の開催
  ・京町家まちづくり調査中間報告会の開催
  ・京町家まちづくり通信の発行(平成10年4月〜平成11年10月:5号発行)
  ・第1回景観・まちづくりシンポジウム
      「京町家の保全・再生を考える」の開催 (平成9年12月)
  ・京町家まちづくりセミナーの開催 (平成10年6月)





(5)調査の価値
 本調査は,京町家の実態と居住者の実像を広範に明らかにする初めての取組であり,調査データは 将来にわたり貴重な価値を有する。このため,調査の詳細なデータについては参考資料として別途と りまとめる。
 しかしながら,更に重要なことは,半年以上にわたって約600名もの市民ボランティアの方々や市 民活動団体等の協力を得て調査が実施できたことである。これほど広範なまちづくり調査を市民参加 で行ったことは,全国で初めての取組であり,京町家に対する市民の関心と市民参加のまちづくりの 可能性が極めて高いことを示すものである。






(6)調査結果の概要
 本市の行った「京町家まちづくり調査」による外観調査数は約2万4千件で,市民調査「木の文化都市:京都の伝統的都市居住の作法と様式に関する研究」の外観調査数の約8千件を加えると全体で約3万2千件の調査となる。

 アンケート調査においては「京町家まちづくり調査」が約3,700件で,同市民調査約1,400件を加え ると約5,100件の調査となる。
 ヒアリング調査については,73件の京町家の居住者等への訪問調査を行った。


表2 調査結果の概要
調査主体 年 度 外観調査件数 アンケート調査件 数
■「京町家まちづくり調査」 平成10年度 23,887 3,665
■市民調査「木の文化都市:京都の伝統的 都市居住の作法と様式に関する研究」 平成 7年度 3,801 7,912 770 1,445
平成 8年度 4,111 675
合     計 31,799 5,110







(7)市民調査「木の文化都市:京都の伝統的都市居住の作法 と様式に関する研究」について
 この調査は,大学の研究機関を中心とした市民グループが,トヨタ財団の研究助成を受けて,平成 7年から平成9年にかけて,丸太町通から五条通,河原町通から大宮通に囲まれた範囲にある京町家 について調査を行ったものである。


【外観調査】
 京都における京町家再生の基礎とするため,伝統的京町家の形態と残存状況,老朽度を分析するため,以下の3項目について調査を行った。
  @建物類型(京町家のタイプを調査)
  A建物状態(建物の老朽度を調査)
  B京町家要素の保存状態(原型にどれだけ改変が加えられたかを調査)

【アンケート調査】
 京町家の居住者がどのような問題を抱え,どのように解決しているか,都心で町家に暮らすことの快適性をどのように享受し,今後住まいに対してどのような将来像を描いているか等,京町家の居住 者像を浮かび上がらせ,町家に暮らすことに対する意識を読みとるためにアンケート調査を行った。

【ヒアリング調査】
 アンケート調査において,協力しても良いという回答があった居住者についてヒアリング調査を実施し,個々の課題を整理した。